渡辺徹さん インタビュー
渡辺徹さんは今年4月、体調が悪いので病院で診てもらったところ、「心筋梗塞と診断され、その場で入院することになった。6時間におよぶ「冠動脈バイパス手術(*1)」を受けた結果、無事に退院でき、6月から仕事に復帰している。入院中は、いろいろな職種のサポートを受けたという。どんなことを感じたか、詳しく話してもらった。(チーム医療推進協議会相談役・福原麻希)
Q.入院前、狭心症を発症した際、どんな体調でしたか?
1ヵ月ほど前から、「いつもと違って、疲れが取れない」と思うことが続いていました。例えば、「ロケで急な坂道を上っていくシーンで息切れがする」「スタッフと歩き始めても、いつもは先頭にいるタイプなのに、一番後ろからついて行ったということが続いて……。アクション俳優として刑事役をしてきましたが(笑)、51歳になって「年を取ったのかな」と。
夜も横になっていると呼吸が苦しくて目が覚めてしまうので、椅子に座ってウトウトする日が続きました。現場ではさわやかに、ニコニコと仕事をしていましたが、周囲からも「顔色が悪いですね」「疲れているんですか」と気付かれ……。事務所のスタッフと相談した結果、しばらく休養することになりました。
ようやく病院に行ったところ、医師から「すぐ、大学病院で検査を受けてください」と言われ、その場で入院が決まりました。体が限界に達していたようです。
Q.30歳の時、どんな生活をしていたのですか?
今朝の体重は78.2㎏、血糖値は120、ヘモグロビンA1c(HbA1c)6.0%。でも、体重がピークの時は130㎏もありましたね。特に、独身の時は朝食を食べずに仕事に行き、ドラマ「太陽にほえろ!」で走るシーンを何度もこなして、腹ペコになってから3人前の食事をたいらげる。撮影が終わると、夕食後は必ず飲みに行く。その繰り返しでした。
26歳で結婚してからは食生活を見てもらえるようになりましたが、いつも仕事であまり家にいないので、コントロールはできにくかったですね。
ダイエットも、いろいろ試してみたんですよ。ワカメダイエット、バナナダイエット、ゆで卵ダイエット、プロテインダイエット……。どの方法も、確かに3~5㎏程度、自分が立てた目標までは痩せるんです。でも、目標を設定するということはゴールがあるから、達成するとごほうびをあげたくなる。リバウンドを起こしてしまう。ダイエットするたびに、太ってきたわけです。
Q.入院中、管理栄養士にはどんなことを言われましたか?
管理栄養士はかわいい女性でしたが、苦手でした。「食品交換表」を説明してくれるのですが、マニュアルの話ばかりで勉強させられている気分になって。いつも同じことを言われるので、わかっていなくても「もう聞いたよ」という気分になり、心の中では「うるせぇなぁ」と思っていたんです。
ある日、「毎回、同じ話でつまらない」「何度、表を見せられても覚えられない」と言ったところ、次から管理栄養士が栄養指導のやり方を変えてくれました。毎回の食事と、朝、血糖値・血圧・体重を測って、iPadやiPhoneから表に記入することになったのです。
それを管理栄養士に見せたところ、僕の生活レベルの話に変わり、理解しやすくなりました。しかも「がんばっていますね」「こんなときは、翌日、こうしましょう」と言ってくれて。それからは、管理栄養士と会う時間が楽しくなりましたね。
医師からも、こう言われました。
「美食家になれ。もっと、食べ物に興味を持て」。印象的な言葉でしたね。
「渡辺さんはお腹を満たせばいいと思っているのでは。もっと、『これは、どんな味がするんだろう』『だしは何から取ったんだろう』と興味を持ったらどうですか」と。
そう思いながら食べるようになったら、咀嚼回数が増えて、ドカ食いがなくなりました。
プロフィール
俳優 渡辺徹(わたなべとおる)
1961年5月12日生まれ 茨城県出身
1980年 文学座研究所入所、1985年 座員となり、俳優としてTV・映画・舞台・CMなどで活躍している。1982年度 ゴールデンアロー賞放送新人賞。1984年度 エランドール新人賞(日本映画テレビプロデューサー協会)。2000年度 菊田一夫演劇賞(『あかさたな』『功名が辻』にて)。主な出演作品は、映画『夜明けのランナー』『そろばんずく』『映画女優』、舞台『2人の夫と私の事 情』『ヘンリー六世』、日本テレビ『太陽にほえろ!』『風の中のあいつ』、TBS『上条麗子の事件推理(シリーズ)』、NHK教育『ドキュメンタリー「地 球ドラマチック」』(ナレーション)『すイエんサー』、毎日放送『魔法のレストラン』、TBSラジオ『下町ロケット』他多数。